100万円の村|全2話・第2話
Aさんが預けた現金は、Bさんが引き出して持っていきました。銀行は、Aさんに渡す10万円をどこから持ってくるのでしょうか。
Bさんが返すまで、待つの?
たけちゃん「Bさんに『10万円だけ返して』って頼むの?」
パパ「それだと、Bさんは予定していたオーブンを買えなくなるかもしれないね。そもそも、銀行は約束した返済日より前に、都合よく返してもらえるとは限らない」
たけちゃん「じゃあ、Aさんが待つの?」
パパ「現実の銀行では、普通はBさんの返済を待たずに引き出せるよ。その裏側を見てみよう」
村の支店は本店に連絡しました。
「現金が足りません。補充をお願いします」
本店は別の拠点から現金を手配しました。現金が届くと、支店はその中からAさんに10万円を渡せました。
たけちゃん「村の外から持ってきたんだ。でも、その本店だって、どこから用意したの?」
銀行にも、口座がある
パパ「実は、銀行も日本銀行に口座を持っているんだ」
たけちゃん「僕たちが銀行に預けるみたいに?」
パパ「似ているね。銀行は、日本銀行にある自分の口座からお金を引き出して、現金を受け取れる。それを支店やATMへ運んでいるんだよ」
たけちゃん「じゃあ、この村にあった100万円だけで、全部の支払いをしているわけじゃないんだ」
パパ「そう。村に支店が一つしかなくても、その銀行は村の外とつながっているんだ」
村の金庫だけを見ていたときには、行き止まりに見えました。
でも、その向こうには本店や別の支店、さらに日本銀行とのつながりがあったのです。
その口座にも足りなかったら?
たけちゃん「でも、銀行自身の口座にもお金が足りなかったら?」
パパ「例えば、余裕のある別の銀行から借りる方法があるよ」
たけちゃん「銀行も借りるんだ!」
パパ「うん。銀行同士でも、今日足りないところと、余っているところがあるからね」
別の銀行から資金を借りられれば、日本銀行にある口座で受け取り、それを現金として引き出すこともできます。
たけちゃん「じゃあ銀行は、お金を貸すだけじゃなくて、引き出しに間に合うように借りたりもしているんだね」
パパ「そう。借りれば利息などの費用もかかる。必要ならいつでも必ず借りられる、というわけでもない。だから、金庫が空になってから慌てるのではなく、前もって準備しているんだよ」
100万円の行方は、どうなった?
Aさんは10万円を受け取り、口座の残高は90万円になりました。
たけちゃん「Aさんは、現金10万円と口座の90万円。合わせて100万円のままだね」
パパ「そう。Bさんも現金100万円を持っている。二人が使える合計は、200万円のままだよ」
たけちゃん「外から現金を持ってきたけど、Aさんのお金がまた増えたわけじゃないんだ」
パパ「うん。今回は、Aさんの口座にあった10万円を、現金に替えたんだ」
たけちゃん「最初に200万円へ増えたのは、銀行がBさんに貸したとき。引き出しは、その後の別の仕事なんだね」
銀行は、手元の現金だけでなく、銀行全体の備えや、ほかの銀行・日本銀行とのつながりを使って、引き出しに応じています。
銀行が貸して預金を生み出すことと、その預金を現金で引き出せるようにすること。その両方が、普段私たちが使っている銀行の裏側で行われています。
※現金の配送には時間がかかります。物語では不足してから補充する流れを描きましたが、通常は事前に手配します。資金調達などができなくなれば払い戻しに支障が出ることもあり、どんな状況でも必ず即時に引き出せるという意味ではありません。
「100万円の村」は、これで完結です。