異常な円安下でのオルカン投資、為替の損失より機会を見逃すリスクに注目

現在、日本経済は異常な円安の影響を受けています。この状況下での投資、特に外国株への投資は多くの投資家にとって大きな関心事です。円安が進む中、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)への投資は賢明な選択なのでしょうか?この記事では、為替ダメージの具体的な影響と投資の機会損失について解析し、投資家が取るべき行動戦略を提案します。

為替ダメージの現実

投資時の為替レート投資額(円)換算後のドル額(通常レート)換算後のドル額(現在レート)為替ダメージ(ドル)為替ダメージ(円)
1ドル=110円100,000円909ドル(約)675ドル(約)234ドル(約)25,752円(約)

この表は、10万円を投資した場合の為替ダメージを示しています。通常レート(1ドル=110円)時には、10万円が約909ドルに相当しますが、現在のレート(1ドル=148円)では約675ドルにしかなりません。この差額の234ドルを再度円に換算すると、約25,752円(234ドル × 110円)の為替ダメージが発生していることになります。

この例から、円安が進むと日本円での投資額に対して、実質的にどれだけの金銭損失が発生するかが明確になります。投資家はこのような為替リスクを考慮し、投資戦略を立てる必要があります。

投資の機会損失との比較

しかし、為替ダメージだけに焦点を当てるのは短絡的です。投資の機会損失、つまり最適な投資タイミングを逃すリスクも考慮する必要があります。1980年から2016年までのS&P 500のデータに基づくと、ベストな投資タイミングを逃した場合、リターンへの影響は非常に大きいことが分かります。長期的な視点で見ると、目先の為替ダメージよりも、投資の機会損失の方が遥かに大きな影響を及ぼす可能性があります。

異常な円安下での即時投資と将来の為替ダメージ

現在の円安状況を考慮した際、即時に海外株への投資を開始する場合と、円の価値が正常化するまで待ってから投資を始める場合の両シナリオを想定します。

シナリオ1: 即時投資

  • 初期投資額:100,000円
  • 投資時の為替レート:1ドル=148円
  • 将来的な為替正常化時のレート:1ドル=110円
  • 投資期間:10年
  • 年間平均リターン:7%

この場合、100,000円は現在のレートで約675ドルに相当し、10年間の投資後のリターンは複利計算により約1,345ドルになります。しかし、円が正常化した際には、このリターンは約148,000円(1,345ドル × 110円)に相当します。即時投資により得られる総リターンは、元本との差額である48,000円です。

シナリオ2: 投資開始の遅延

円の価値が正常化するまで待ち、その後に同じ条件で投資を開始する場合を考えます。このシナリオでは、為替ダメージは発生しませんが、投資期間が短くなることによる運用機会の損失が発生します。

  • 待機期間:例えば3年
  • 投資期間:残りの7年
  • 年間平均リターン:7%

この場合、同じ100,000円を7年間運用した場合の最終リターンは、約160,578円になります。即時投資のシナリオ1と比較すると、待機期間による運用機会の損失は、約12,000円(148,000円 – 136,000円)となります。

まとめ

この比較から、異常な円安下での即時投資による将来の為替ダメージは存在しますが、それを避けるために投資開始を遅らせることによる運用機会の損失も無視できないことがわかります。長期的な投資視点で考えた場合、即時投資による短期的な為替リスクを受け入れることが、より多くの利益を生む可能性があると言えます。

結論:積立投資の重要性

本記事で検討した異常な円安の状況とその下での投資戦略を踏まえ、最終的な結論は「積立投資の重要性」に集約されます。円安による為替リスクと投資の機会損失の間のバランスを考えると、以下のポイントが浮き彫りになります。

  1. 為替リスクと機会損失のトレードオフ:短期的な為替変動に目を奪われることなく、長期的な投資成果を最大化するためには、為替リスクをある程度受け入れ、積極的に投資を行うことが重要です。為替ダメージを過度に恐れて投資を遅らせることによる機会損失は、長期的に見ればさらに大きな損失を招く可能性があります。
  2. 長期投資の視点:為替変動は避けられない市場の一部ですが、長期的な視点で見れば、市場は一般的に成長傾向にあります。この視点から、短期的な市場の変動に動じることなく、積立投資を続けることが重要です。
  3. 積立投資の利点:積立投資は、市場のタイミングを読むことなく、定期的に一定額を投資する戦略です。これにより、市場の平均的なリターンを享受しやすくなり、長期的なリスク分散にも寄与します。

結論として、異常な円安の時期であっても、積立投資を継続することは賢明な選択です。為替変動リスクを受け入れつつ、長期的な成長への投資を続けることで、最終的にはより良い投資成果を期待できます。投資家は、市場の不確実性を理解し、それに対処しつつ、着実な投資戦略を続けることが求められます。