「バビロンの大富豪」の教えでFIREできるのか?

「バビロンの大富豪」は、多くの人にとって参考になる書籍です。しかし、その教えが現代でも通用するのかは重要な疑問です。この記事では、「バビロンの大富豪」の教えが現代においても有効であり、FIRE(経済的自立と早期退職)を目指す上で役立つかどうかを検証します。

「バビロンの大富豪」の教えの5つのポイント

まずは「バビロンの大富豪」の教えの5つのポイントを簡単におさらいします。

(1)収入の一部を貯蓄

古代バビロンでの教えは、収入の10%を貯蓄することです。この教訓の鍵は、貯蓄額を収入の固定割合にすることにあります。これにより、収入の多寡に関わらず、一貫した貯蓄を実現することが可能です。

(2)借金を避ける

古代と現代の借金の形態は異なります。例えば、現代ではクレジットカードや住宅ローン、車のローン、学費のローンなど、借金と気付きにくい形態が存在します。これらの借金は見過ごされがちですが、注意深く管理する必要があります。

(3)投資で資産増

現代の金融環境は古代バビロンよりも進化しており、さまざまな金融商品へのアクセスが容易になっています。これにより、資産を効率的に増やすための投資がより簡単に行えます。

(4)リスク分散

投資の世界では「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があります。これは、投資を1箇所に集中するリスクを教えています。例えば、全資産を一つの株式に投資した場合、その株式が暴落すると大きな損失を被るリスクがあります。古代も現代も、リスク分散は重要な原則です。

(5)計画的運用

目標設定とリスク許容度を考慮した運用が重要です。多くの人は明確な目標設定が難しいかもしれませんが、リターンの高い投資に集中するリスクを避け、計画的に資産を運用することが求められます。例えば、特定の年齢までにFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指す場合、その目標に向けて必要な資産を計画的に築く必要があります。

現代版としてアレンジ

前述した内容を現代的な視点でアレンジしてみましょう。実は、現在では「2. 借金を避ける」を除き、ほとんどの項目を自動で実践できるシステムが存在します。それが「投資信託」です。

「投資信託」とは、一定の手数料と引き換えに、プロの投資家が資産運用を行う金融商品のこと。初耳の方には少々疑わしく思えるかもしれませんが、現代の投資技術は非常に高度で、リスクを最小限に抑えながら利益を出す方法が確立されています。そのため、失敗する可能性は極めて低いと言っても良いでしょう。

このトピックについての詳細は、別の記事で詳しく紹介する予定です。今は、このような便利なシステムが存在することを知っていただくだけで結構です。

「投資信託」でFIREできるか検証

「投資信託」を用いてFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期退職)を実現できるかどうかを検証してみましょう。個々の状況は異なりますが、ここでは日本人の平均的な生活スタイルを基にして条件を設定します。

投資の開始時期

大学入学後、アルバイトの収入の10%を投資信託に投資すると仮定します。

職業

様々なキャリアパスがありますが、分析の基準としては一般的なサラリーマンを想定します。

収入の詳細

学生時代は年間30万円のアルバイト収入、社会人になってからは日本の平均給与を基に計算します。以下に収入の推移を示します。

  • 18〜22歳:年収30万円
  • 23〜29歳:年収300万円
  • 30〜39歳:年収400万円
  • 40〜47歳:年収500万円
  • 48歳以降:年収550万円

使用する投資信託

多くの選択肢がある中で、堅実性が高いとされる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を用います。

投資信託のリターン

この投資信託の年率リターンを6%と仮定し、計算に用います。これは過去の実績が年率約10%であることを踏まえての保守的な見積もりです。

以上の条件で、18歳から収入の10%を投資し続けた場合のシミュレーション結果は以下の通りです。

年齢投資歴年収(万円)年間投資額(万円)年収の10%残高(万円)年間リターン率運用結果(万円)
18歳1年306666%6.4
19歳2年306126.16%13.1
20歳3年306196.26%20.2
21歳4年306266.36%27.8
22歳5年306346.46%35.9
23歳6年30060966.56%101.6
24歳7年300601626.66%171.3
25歳8年300602316.76%245.2
26歳9年300603056.86%323.5
27歳10年300603836.96%406.5
28歳11年300604667.06%494.5
29歳12年300605547.16%587.8
30歳13年400806687.26%707.8
31歳14年400807887.36%835.1
32歳15年400809157.46%970.0
33歳16年400801,0507.56%1,113.0
34歳17年400801,1937.66%1,264.6
35歳18年400801,3457.76%1,425.3
36歳19年400801,5057.86%1,595.6
37歳20年400801,6767.96%1,776.1
38歳21年400801,8568.06%1,967.5
39歳22年400802,0478.16%2,170.3
40歳23年5001002,2708.26%2,406.5
41歳24年5001002,5078.36%2,656.9
42歳25年5001002,7578.46%2,922.3
43歳26年5001003,0228.56%3,203.7
44歳27年5001003,3048.66%3,501.9
45歳28年5001003,6028.76%3,818.0
46歳29年5001003,9188.86%4,153.1
47歳30年5001004,2538.96%4,508.3
48歳31年5501104,6189.06%4,895.4
49歳32年5501105,0059.16%5,305.7
50歳33年5501105,4169.26%5,740.6
51歳34年5501105,8519.36%6,201.7
52歳35年5501106,3129.46%6,690.4
53歳36年5501106,8009.56%7,208.4
54歳37年5501107,3189.66%7,757.5
55歳38年5501107,8689.76%8,339.6
56歳39年5501108,4509.86%8,956.5
57歳40年5501109,0679.96%9,610.5
58歳41年5501109,72110.06%10,303.8
59歳42年55011010,41410.16%11,038.6
60歳43年55011011,14910.26%11,817.5

収入の10%を投資するのは比較的容易な金額です。33歳で資産は1,000万円を超え、40代前半では3,000万円を超えます。この時点で、資産の増加だけで年間200万円以上のリターンが見込め、サイドFIREの生活が可能になります。

複利の効果で資産は加速度的に増え、50歳で5,000万円、60歳前には1億円を突破する見込みです。「バビロンの大富豪」の教えに沿ったFIRE実現は、現代でも十分現実的であると結論付けられます。

結論/まとめ

この記事では、投資信託を用いてFIRE(経済的自立と早期退職)を実現する可能性について検討しました。具体的には、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託を例に、日本の平均的な収入状況を背景に、実際の数値を用いてシミュレーションを行いました。

主なポイントは以下の通りです。

  1. 早期からの投資の重要性
    大学入学後から収入の10%をコンスタントに投資することで、長期にわたる資産形成が可能です。
  2. 平均的な収入でのFIRE実現
    日本の平均的なサラリーマンの収入をベースにしたシミュレーションでは、40代前半に3,000万円を超える資産を築くことが可能で、サイドFIREを目指せる状況が見込めます。
  3. 複利の力
    長期間にわたる投資は複利の効果で資産を加速度的に増やし、50歳で5,000万円、60歳前には1億円を超える資産を築くことが可能です。

結論として、堅実な投資信託を活用し、早期から計画的に投資を行うことで、FIREの実現は十分に現実的であると言えます。この方法は、特別なリスクを冒すことなく、安定した資産形成を目指す方にとって特に魅力的です。もちろん、個々の状況や市場の変動によって結果は異なりますが、長期的な視野で考えることが成功の鍵となるでしょう。